飲み終えたあとも、祝福が続く宝船
2025.12.21

新年を迎えたときに嗜む日本酒には、ほかのお酒とは少し違う役割があります。
ただ味わうためだけの存在ではなく、家族や親しい人と顔を合わせ、「今年もよろしく」と言葉を交わすためのもの。
おせちを囲み、盃を重ねる時間そのものが、年の始まりの記憶として残っていきます。
「丙午年 迎春宝船ボトル」は、そんな日本酒本来のあり方を大切にしながら、さらにその先の楽しみ方まで見据えて生まれた一本です。
飲み終えたあとも九谷焼の作品として暮らしに残り、季節を迎えるたびに、新しい表情を見せてくれる。
宴の時間が終わっても、新年を迎えた祝福は静かに続いていきます。


ボトルに描かれているのは、宝船に乗った干支・午(うま)の姿です。
宝船は古くから、福を運ぶ縁起物として正月に親しまれてきました。七福神を乗せ、穏やかな波の上を進むその姿には、「一年が無事でありますように」という人々の願いが込められています。
そこに描かれた馬は、前へ進む力や躍動感の象徴。新しい年へ向かって歩み出す気持ちを、軽やかに後押ししてくれる存在です。
この絵付けを手がけたのは、九谷焼作家・田村星都さん。
すべて一点一点、手描きで仕上げられており、極めて細く美しい線で描かれた回文歌や和歌も、このボトルの大きな魅力となっています。
絵を眺め、言葉を読み、作品として手に取ることで、日本の正月文化や美意識が自然と伝わってきます。

この特別な九谷焼ボトルに詰められているのは、農口尚彦杜氏が醸した日本酒です。
農口杜氏を象徴する「山廃純米大吟醸」の中でも、香りと旨味のバランスが美しいヴィンテージ原酒を瓶詰めしました。
長い年月を酒造りに捧げ、今もなお蔵に立ち続ける杜氏が、静かに、丁寧に仕上げた一本。
新年の始まりにふさわしい、落ち着きと奥行きのある味わいが広がります。
そして、この酒を飲み終えたあと、ボトルは作品として新たな役割を担います。
存在感のあるこのボトルは、そのまま飾るだけで、凛とした空気を放ちます。
また、時に花器としても。
白梅や椿、南天など、和の花を一輪活けるだけで、空間がすっと引き締まり、季節の気配が立ち込めます。
鏡餅を添えれば、正月の設えとしても自然に馴染みます。
特別な器だからこそ、しまい込むのではなく、日々の暮らしの中で使い、季節を迎えるための存在として楽しんでほしい――そんな想いが、この迎春宝船ボトルには込められています。

祝いの酒を飲み、その器を暮らしに迎え入れる。
暮らしの中でふと目に留まるたび、花を活けるたびに、あの年の正月の景色や会話、笑顔がよみがえるかもしれません。
「丙午年 迎春宝船ボトル」は、日本酒であり、工芸であり、そして記憶を宿す器でもあります。
飲んで終わりではなく、時間とともに意味を重ね、暮らしの中で静かに生き続ける存在。
年のはじまりに選ぶ一本が、その年の時間を少し豊かにし、また次の季節へとつながっていくように。
願いを込めて、この迎春宝船ボトルをお届けします。
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(協力)
花 安藤、旧高峰家



