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【『夢造』のはじまり vol.1】輿水精一氏と共に造る復興支援酒

2025.11.19

農口尚彦の出身地であり自宅がある能登が、地震によって大きな被害を受けた2024年元旦。


実はその直前、2023年12月の文化庁長官表彰受賞の場で、農口杜氏は世界屈指のウイスキーブレンダー・輿水精一さんと出会っていました。ジャンルは違えど同じアルコール飲料に携わる者として意気投合した二人。それから間もなくして、正月祝いの最中に能登半島地震が起こりました。


地震後、輿水さんは農口杜氏の状況を案じ、さらには「能登のために何かできないか」と考えてくださっていたとのこと。それがこの「ブレンド酒開発プロジェクト」の始まりでした。


今回のコラボにあたり、本品の売り上げの一部を被災地の復興支援へ寄付することが決まっています。輿水さんは「義援金というやり方もありますが、私は私のやり方で能登への思いを形にしたいと思ったんです」と話します。


本プロジェクトは、農口杜氏が当蔵で造った日本酒の中から数十種類を輿水さんにお渡しし、それをもとにブレンド酒を完成させていただくというもの。


今回お二人の対談を通して、新たに販売されるブレンド酒『夢造』への想いや制作秘話などをお伺いしました。


―― 輿水さんは日本酒のブレンディングもご経験があるそうですが、一つの蔵の酒でブレンド酒を作るのは初めてだそうですね?


輿水精一(以下、輿水)「はい。本来ウイスキーはブレンディングを前提として造られるため、原酒はそれぞれでかなり個性が強いんです。学校で例えると、優等生がいれば劣等生もいる。それが交わることで面白い化学変化が起きるんです。しかし、日本酒のブレンディングの難しいところは、全て単体で飲むために造られた酒であるということ。言ってしまえば、全て美味いんですよ。本音を言えばブレンドする必要はないんです。特に農口尚彦研究所の日本酒だけで行うブレンディングなんて優等生ばかり。今回はそこがとても難しかった」


―― 農口尚彦研究所の日本酒はそのほとんどが熟成酒ですよね。


農口尚彦(以下、農口)「もちろんウイスキーの熟成法とは全く異なりますけれど、この蔵で造った日本酒の全ての品種を貯蔵し、寝かせていますよ。長いもので7、8年物でしょうか。酒蔵はその年の米を使いその年の酒を造って売ることが主流ですが、酒造りは常に進化していますから。様々な酒が各地で造られる中でそこに参入していくには、新たな価値観も大切。日本酒は熟成することで再発酵され、それぞれの要素の調和がとれてまろやかになっていくんですよ」


—― 輿水さんは今回どういった出来上がりをイメージしてブレンディングされたのでしょうか?


輿水「私が言うのもおこがましいですが、ブレンドしていて思ったのは、原酒のそれぞれがやっぱりかなり精度が高いということ。自分がそこに手を加えるというのは、正直最初は自信がありませんでした。ですが農口さんの日本酒は、熟成を経たことで良い意味で複雑さを持っている。これはウイスキーとの共通点です。元々持っている熟成の複雑さを、ブレンドによってさらに複雑化していき、その中で日本酒の持っている旨み・甘み・酸という非常に大事な要素のバランスを整えることを目指しました」


農口「通常日本酒の業界でブレンド酒というと、同じ銘柄の中で混ぜ合わせるものなんですよ。飲み手の好みも様々ですから、異なる飲み口の銘柄を各酒蔵は出しているわけで、その方向性がぶれないようにブレンドをするんです。しかしこのお方(輿水さん)は、その銘柄という壁を取っ払って先入観がない状態でブレンドをする。そして新しいものを生み出しているわけです。素晴らしい仕事ですよ」


輿水「農口さんからそう言っていただいて恐縮です。先ほど述べたように今回は難しさもありましたが、新たな発見にもなりました。個性の強い原酒で行うウイスキーのブレンディングが、赤・青・黄色など原色の絵具を用いて描くダイナミックな作品だとしたら、今回のブレンディングは紺・青・水色といった同系色の絵具で描く洗練された絵画。農口杜氏が造られたお酒の“色”を使って、丁寧にグラデーションを施していくような作業でした。最終的には、各9種類ずつの原酒を使った2種類のブレンド酒、それぞれ味わいが異なるものができたと思います」


―― 今回、酒造りの神・ウイスキー造りの神と言われるお二人が揃った貴重な機会ですので、ぜひ今後の各業界の動向や、業界を牽引していくために必要なことなどを伺いたいです。


農口「今まで私は多くの弟子を育ててきましたが、その中で今は海外で活躍する者もいます。私の酒も今や28カ国に輸出しておりますし、日本酒はもはや世界市場。だからこそ私が目指しているのは海外の方にも好まれる、旨みがあってキレがいい、爽やかな日本酒。但し、そのために全てを変えていくわけではありません。私は常々麴造りの大切さを伝えるようにしてきましたが、そういったたどり着いた本質を守りつつ、必要のないところをそぎ落として挑戦にかえていけることが大事だと思いますね」


輿水「日本の人口減少は止まりません。農口さんの言う通り、業界の中で発展していくためには海外の方々にも評価される酒でないと成長していくことは難しいと思います。そのためには、世界中にいるウイスキーファンに信頼されたり尊敬されたりしなければならない。それぞれのメーカーが「自分たちはこういうものがつくりたい」という骨格がしっかりとしているかどうか、それをファンはちゃんと見ています。今農口さんがおっしゃられていた、ご自身が目指す日本酒についても、とても具体的ですよね。そういった目指す先があるメーカーは海外でもちゃんと訴求力を持つことができると思いますし、そこは日本酒もウイスキーも一緒だなと思います」


農口尚彦研究所の新たな挑戦でもあるブレンド酒『夢造』。レジェンドと呼ばれる二人のタッグによって、どんな相乗効果を生み出すことができたのでしょうか。


今回、インタビューと合わせて、輿水さんが考案いただいた配合比率のウイスキーを農口杜氏がテイスティングする場面にも立ち会うことができました。次回はその様子をお届けしたいと思います。


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