伝統の真田紐工房を訪ねて
2024.07.05
農口尚彦研究所は、農口尚彦杜氏の技術・精神・生き様を次世代へ継承することをミッションとしておりますが、それと同様に酒以外の伝統文化継承への想いも強く、私たちの事業の中で少しでもその魅力をお伝えできるよう取り組んでいます。
お酒のパッケージやテイスティングルームで提供する食材などを通して、農口尚彦研究所が皆様と共有することで、長年にわたり継承されてきた理由や、関わっている人々の想いを知っていただけたらと考えております。
今回ご紹介するのは夏の限定商品「酒粕焼酎」のボトルに掛けられた真田紐。こちらは当酒蔵と同じ石川県小松市にある『織元すみや』様 に制作いただいております。
小松市は、湿潤な気候や豊富な水資源があり、繊維織物製造にとって恵まれた条件が揃っていることから、古く絹織物が育まれ“繊維の町”として栄えてきました。
昭和初期に石川県で創業し、現在は小松市に工房を構えていらっしゃる『織元すみや』様。450年の歴史がある真田紐ですが、会社単位で製造を行う専門工房はほとんど残っておらず、大変貴重な存在なのだといいます。今回はその工房にお邪魔して、製造を手掛けていらっしゃるスタッフさんにお話しを伺いました。
そもそも真田紐とは、世界で最も幅の狭い織物のひとつと言われ、細い糸を織機で織って作られる紐のこと。伸びにくく結びなおしやすいという特徴があり、茶道の茶道具をしまうための木箱や贈答品のパッケージに使用されています。
真田紐という名前の由来には様々な説がありますが、戦国武将真田昌幸・幸村父子が甲冑に巻いていたことからその名が付いたという説や、ネパールの細幅織物“サナール”から名付けられたという説も。
工房に足を踏み入れると、たくさんの織機がずらりと並んでいました。異なる色の糸がセットされ、織機が音を立てて動くたびに模様となって紐が織られていきます。
真田紐には一枚布状の平織と筒状の袋織があり、同社では美しいツヤのある絹糸、熱に強い綿糸、鮮やかな色合いが抜けない合成繊維も扱います。常時150種類以上ものデザインが用意されていますが、お客様に合わせて色から柄までオーダーメイドで作られることもあるといいます。
大昔は真田紐の模様を見れば誰の持ち物かわかる。家紋のような役割を持っていたという真田紐ですからオーダーメイドが増えるのも必然。
長年同社で職人をする空豊治さん。昔と比べるとデザインの種類がずいぶん増えたと話します。
「真田紐は“織物であること”と、“紐として使える幅であること”という2つの制限があります。そのため、自由な絵柄やマークを入れることは難しいんです。ただ、その制限がある中でどんなことができるのか、もっと多彩なことができないか。アイデアを紡ぐことがこの仕事のおもしろいところなんです」
商品企画にも携わるスタッフさんからは「お客様から刺激をもらうことも多い」という声も。茶の湯文化や工芸が盛んな石川県だからこそ、アート関係や作家のお客様が多く、そういった方々の色の合わせ方や模様作りの発想がスタッフの方々のモチベーションにもなっているといいます。
専門工房だからこそできる技術と、スタッフの方々のアグレッシブな姿勢が組み合わさり、全国各地のお客様から信頼を得る『織元すみや』様。現在は真田紐製造の技術を活用してインテリアやファッション小物の装飾、靴紐やペット用リードなど真田紐の新たな活用を進めていらっしゃいます。
オンラインストアも設けていらっしゃいますので、是非ご覧になって下さい。
今回、農口尚彦研究所からリリースされた「酒粕焼酎 2022 Vintage」のボトルには、『織元すみや』様の数あるデザインの中から淡い赤 の真田紐をセレクトいたしました。従来涼しげな寒色系の真田紐を選んでおりましたが、今回は手仕事の情熱や温もりが感じられるような暖色カラーに。
日本の伝統美を添えた「酒粕焼酎」は、ロックやストレートのみならず、食中酒として水割りやソーダ割、カクテルのベースとしてもお楽しみいただけます。透明感のある上品な味わいと、僅かに穀物のような香ばしさと共にフルーティな風味が余韻長く続くお酒です。洋梨やカリンが香る華やかなアロマと合わせて、こだわりのパッケージにもぜひご注目ください。